2014年6月18日の参議院本会議で、一定以上の所得がある高齢者を対象に介護サービスの自己負担額を引き上げる法律が成立しました。
対象となる高齢者は、年間280万円以上の年金を受け取っている人を念頭に、年金以外でもある程度の所得がある高齢者も順次適応していくとしました。
値上げが止まらない介護サービス自己負担額
現在の介護サービスの自己負担額は1割ですが、今回の法案成立によって負担額は2割となります。
また、同時に特別養護老人ホームに入所出来る高齢者の対象を原則要介護3以上とする事も発表した。
在宅介護サービスを利用している高齢者の約14%が、年間280万円以上の年金を受け取っている高齢者にあたります。
また、施設に入所している高齢者も含めると、全国で約50万人が今回成立した法律によって、負担額が多くなると考えられます。
年収383万円以上ある世帯では、介護サービスの自己負担限度額を現在の37,200円から44,400円に引き上げられることも決定しました。
低所得高齢者の負担は下がる
こうした中、低所得の高齢者に対しては負担額を下げる対策もとられる事が決まりました。
住民税が非課税となっている高齢者、つまり既定の所得額に満たない世帯で暮らす高齢者は、介護保険料を所得に応じて30%から70%減額すると発表されました。
これによって、今まで介護サービスが受けられなかった高齢者でも、少ない負担額でサービスを受けられるようになると予想されています。
また、サービスの料金体制にも変化があります。介護度が要支援の高齢者が利用する、通所介護と訪問介護の利用料金は現在全国一律ですが、今回の法律によって、今後は市区町村がサービスの内容と利用料金を自由に決める事が出来るようになります。
特別養護老人ホームへの入所基準が厳しくなった半面、通所介護と訪問介護などでカバーする流れとなりそうです。
介護事業の自由化で起こる事態
介護事業を各自治体に任せるということについて様々な意見もあります。
良い意味では、他より安くて良いサービスの提供を心がけることによって、介護業界の良化に繋がると言われています。
新しいビジネスとしても注目を集めている介護業界に、今後は大手企業も参入してくる事が予想され、介護サービスの充実化も十分考えられます。
その一方で懸念されている点では、自治体によってサービスの格差が生まれる事です。都心などの地税が豊富な所では、これまで以上にサービスの向上が考えられます。
しかし、地方などの財源もなく、ましてや高齢者が多く働き手がいない少子高齢化が進んでいる所では、これまでのような決められた内容のサービスをいままでより安く提供できるとは考えられません。
このままでは、地方の介護格差が生まれる事になりかねます。
今後、日本の介護はどこに向かう
私の感想は、結局いまだに政府は現場の状況を理解していないと感じました。
というのも、今回の法律で想定されているほど、現代の高齢者のほとんどは介護サービスを利用していないという事実です。
年金すらまともに貰えていない中、ほとんどの高齢者は普段の生活費すらギリギリの状態で日々暮らしています。介護サービスを利用する余裕すらない人もまだまだ多いんです。
そんな中での今回の法律成立は、こういったギリギリの生活を送る高齢者にとって、さらに負担を増やす結果となるでしょう。
私には、年々増加する介護保険による国の負担を、どう理由をつけて押さえようかという政府の魂胆すら感じられます。
一定以上の所得がある高齢者にとっては、ただ単に介護保険料の負担が増え、生活がますます苦しくなる。介護サービスは最低限の利用にとどまり、これまで以上に介護サービスを利用しなくなる。
そして所得が少ない高齢者は、自己負担額が少なくなったと言われても、なかなか介護サービスを利用することはなく、地方自治体が運営する通所介護や訪問介護は年々赤字続きに。
一部の大手企業と手を組んだ自治体だけが勝ち残り、動ける高齢者は故郷を離れ成功した地方へ移住、動けない高齢者は過疎化した地方で貧しい生活を送る。
私にはそんな未来が見えます。
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