肺炎球菌ワクチンの接種は慎重に

肺炎球菌ワクチンの接種は慎重に

最近テレビCMでよく耳にする肺炎球菌ワクチンですが、専門家や介護に携わる人からは非難が殺到しています。

MSD株式会社のCMでは俳優の西田敏行を起用し「65歳からの肺炎予防」とうたい「肺炎は日本人の死因第3位」と危機感を煽っています。

またそれに続けと言わんばかりに、ファイザー株式会社のCMでは加山雄三を起用しています。

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高齢者の肺炎の7割は誤嚥によるもの

ですが、介護に携わった方なら知っているように、高齢者の肺炎の原因の70%以上は誤嚥性による誤嚥性肺炎です。つまり肺炎球菌ワクチンは全く関係ありません。

誤嚥性肺炎は、細菌が唾液や胃液と共に肺に流れ込んで生じる肺炎です。高齢者の肺炎の70%以上が誤嚥に関係していると言われています。

一般社団法人 日本呼吸器学会「誤嚥性

高齢者肺炎のほとんどは、誤嚥(ごえん)による肺炎であり、よく繰り返すことから、単に肺炎を治療するだけではなく、予防することが重要になります。

goo ヘルスケア 「肺炎<お年寄りの病気>の症状や原因・診断と治療方法」

肺炎球菌ワクチンの実態と副作用

「誤嚥性肺炎は防げないが、肺炎球菌は防げる」といった声も聞こえてきそうですが、肺炎球菌ワクチンは全ての肺炎球菌に有効という訳ではありません

炎球菌ワクチン(Pneumococcus Vaccine)とは、肺炎球菌ウィルスの免疫を付け、感染を予防するためのワクチンです。ワクチンには、7価と23価の2種類があり、23価のワクチンの方が、より多くの肺炎球菌に対応しています。但し、全ての肺炎球菌に有効と言う訳ではありません。

副作用ハンドブック「肺炎球菌ワクチンによる副反応(副作用)」

また、肺炎球菌ワクチンによる副作用もいくつか確認されています。

副反応(副作用)の名称想定される症状等
アナフィラキシー様症状紅斑がでる、悪寒がする、口腔咽頭浮腫ができる、口内の違和感がある、かゆみがある、くしゃみがでる、顔面紅潮する、熱感がある、吐き気がする、嘔吐する、尿意がある、便意がある、そう痒感がある、全身発赤する、顔面や喉頭浮腫ができる、呼吸困難になる、血圧が低下する、喘鳴(ぜんめい)が聞こえる、血管浮腫になる、不快感がある、眩暈(めまい)がする、耳鳴がする、発汗がある等
血小板減少(血小板減少症)手足に赤い点(点状出血)ができる、あざができる、鼻血がでる、歯茎の出血がある等
知覚異常皮膚の感覚がおかしい、感覚異常(感覚障害)になる、痛感、温度感覚、触覚、深部感覚などの感度が異常になる、知覚神経や伝導路に障害がでる、知覚過敏になる、知覚鈍麻になる、知覚消失する、一般に触覚の異常がある等
ギランバレー症候群(Guillain-Barre Syndrome)等の急性神経根障害両手両足に力が入らず動かせない、手足先のしびれ感がある、顔筋や目を動かす筋肉に力が入らない、呂律がまわらない、食事をのみこみにくくなる、呼吸ができない、高血圧になる、低血圧になる、不整脈がでる等
蜂巣炎(ほうそうえん)・蜂巣炎様反応皮膚の赤らみがある、皮膚の痛みがある、感染部を押すと痛む、発熱する、悪寒がする、心拍数が上昇する、頭痛がする、低血圧になる、錯乱状態になる、発赤する、腫脹する、疼痛がある等
全身症状無力症になる、倦怠感がある、違和感がある、悪寒がする、発熱する、ほてりがある
筋・骨格系関節痛がある、関節炎がある、筋肉痛がある
局所症状可動性が低下する、疼痛がある、熱感がある、腫脹する、発赤する、硬結がある、そう痒感がある
精神神経系感覚異常がある、熱性痙攣がある、頭痛がする
呼吸器咽頭炎になる、鼻炎がある
消化器嘔吐する、悪心がある
血液リンパ節症になる、リンパ節炎になる、白血球数が増加する
皮膚蕁麻疹(じんましん)がでる、皮疹がでる
その他血清病になる、血清C-反応性蛋白 (CRP)値が上昇する、ALT(GPT)値が上昇する、腋窩痛がある

これらの副作用は成人であればともかく、高齢者にとっては命の危機に関わるものもあります。「肺炎球菌ワクチンを打って副作用で倒れた」といったことはあってはなりません。

肺炎予防をうたった詐欺疑惑の声も

そして、今回の肺炎球菌ワクチンはあくまで予防目的になるので任意接種になります。つまりワクチンの費用は患者が全額自己負担ということです。

肺炎球菌ワクチンの費用は6,000円〜8,000円前後と言われており、各自治体によって助成金が受けられる場合もありますが、受けられない場合もあります。

ちなみにMSD株式会社とファイザー株式会社はどちらも製薬会社で、肺炎球菌ワクチンを打つ患者が増えれば、原価約5,000円の薬剤「ニューモバックス」が売れることになります。

肺炎球菌ワクチンの接種は慎重に

肺炎による死因のほとんどは誤嚥性肺炎ですが、風邪やインフルエンザのようなウィルス性肺炎が原因で死亡するケースも少なくありません。

とくに、お年寄りは免疫力が低下しているので、肺炎球菌感染症がきっかけで髄膜炎菌血症・敗血症になることも考えられます。

公共の場へよく出向くといった方は、肺炎球菌に感染する確率も高いと言えるので、もしかするとワクチンを接種するべきなのかもしれません。

ですが、命に関わるような副作用もあるということを念頭に、本当に必要なのかどうかの判断は慎重に行うようにしましょう。

肺炎球菌ワクチンの接種は慎重に
介護
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この記事を書いた人
Misaki

現役の介護職員でありWebライターとしても活動。保有資格は介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)、実務者研修、ホームヘルパー2級(現、介護職員初任者研修)、介護事務。また両親の在宅介護も経験しており、職員側と利用者側の双方の立場から専門的な見解を行っています。

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