最近話題を集めている小規模多機能型居宅介護施設とは、デイサービスの役割を果たす通所、ショートステイの役割を果たす宿泊、そして訪問介護(ホームヘルプサービス)をひとつの事業所で提供する居宅介護サービスです。
住み慣れた家や地域を主体として高齢者の自立を支援する地域密着型サービスとして、これからの超高齢化社会を支える介護サービスと注目されています。
小規模多機能型居宅介護施設は登録制の定員有り
小規模多機能型居宅介護施設は、通所・泊まり・訪問といった異なるサービス内容から、受け入れ可能な定員が全国共通で決まっています。正確には「受け入れ」ではなく「登録制」で、ひとつの事業所につき最大29名まで登録可能です。さらに登録者の中から通いは15名まで、宿泊は9名までとされています。訪問に関しては様態や希望に応じて対応してくれます。
事業所によっては訪問の回数制限も設けたり、職員とのバランスを考えて定員を規定より減らしてサービスの質の向上を図っているケースもみられます。
ターミナルケア対応型の小規模多機能型居宅介護施設
事業所によっては終末期介護(ターミナルケア)にも対応した小規模多機能型居宅介護施設が存在します。病院が高齢者のホスピスと化してる現状では、住み慣れた地域で顔見知りの知人に見守られながら最期を迎えることができると人気も高まっています。
小規模多機能型居宅介護施設の利用基準
小規模多機能型居宅介護施設に登録するには要介護認定を受けていること、そして小規模多機能型居宅介護施設が所在する市区町村に住民票があることが前提となります。住所地特例の利用も可能です。
その他には、日常的な医療行為が不要で感染症にかかっていないこととや、事業者内でサービス提供が可能な状態であることが利用基準となっています。
小規模多機能型居宅介護施設の利用料金
要介護認定による介護度に応じて利用者が負担する費用は定まっており、利用料金は定額制となっています。基本的な利用者負担額は以下の通りです。
施設内サービス (通い・泊まり) | 訪問介護サービス | |
---|---|---|
要支援1 | 3,403円 | 3,066円 |
要支援2 | 6,877円 | 6,196円 |
要介護1 | 10,320円 | 9,298円 |
要介護2 | 15,167円 | 13,665円 |
要介護3 | 22,062円 | 19,878円 |
要介護4 | 24,350円 | 21,939円 |
要介護5 | 26,849円 | 24,191円 |
※その他に、宿泊費、食費、おむつ代が別途必要になります
小規模多機能型居宅介護施設のメリット
- 地域住民を対象とした登録制介護サービスになるため利用者同士も過ごしやすい環境
- 通い、宿泊、訪問と在宅介護に必要なサービスの全てが信頼できる職員によって提供される
- サービス内であれば様態の変化によるケアプランの作り直しは不要
- 運営元とは共通の事業者になるため連絡の手間が省ける
- 利用者負担は月額定額制のため安心して長期的なプランを立てやすい
- 24時間365日でサービスが利用できる
小規模多機能型居宅介護施設のデメリット
- 小規模多機能型居宅介護施設以外の居宅介護サービス(訪問看護と福祉用具貸与は除く)が介護保険適用外となってしまう
- サービスの一部に不満があっても他の事業者に依頼するということはできない
- 利用者負担は定額になるためサービスを利用しない方にとっては損に感じる
小規模多機能型居宅介護施設のルーツ
小規模多機能型居宅介護施設と明確に確立されたのは2006年4月の介護保険法改正以降。ですが、小規模多機能型居宅介護施設が創設された以前から「宅老所」と呼ばれる介護事業所が、通い、宿泊、訪問をひとつの事業所で提供していました。
宅老所では、日中の入浴や食事、レクリエーションといった日帰りの通所介護から、夜間の宿泊、そして利用者宅へ訪問し食事介助や排泄介助を行う訪問介護も行われています。ただ、全て介護保険適用外のサービスだったため、利用者負担が高額だった、もしくは地域ボランティアによって運営されている状態でした。
ですが、地域に密着した介護サービス、そして小規模だからこそ臨機応変に対応できたことが、現在の日本の介護に求められる形態だと注目され、小規模多機能型居宅介護施設が開始したと言われています。
また、1993年に開所した富山県にある宅老所「このゆびとーまれ」の、利用者のお年寄りと地域に住む障がい者や児童を一緒に預かる形態(富山型)も小規模多機能型居宅介護施設のルーツになっています。
介護保険の対象となる小規模多機能型居宅介護施設のかたわら、今では介護保険対象外の宅老所は無くなりつつありますが、地域での介護の大切さに気付かせた貴重な介護事業形態と言えます。
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